HIV(読み:エイチアイブイ)とは、ヒト免疫不全ウイルスというウイルスの一種。
このHIVというウイルスに感染することで、人間の体を細菌やウイルスなどの病原体から守る、「免疫」という働きをするCD4陽性細胞(白血球の一種)が破壊され、免疫力が低下します。この免疫力低下がエイズを発症する原因となります。
英語の「Human Immunodeficiency Virus」の頭文字をとってHIVという。
日本では20〜30歳代に多く見られる傾向があり、全体で毎年1000人以上の新規HIV感染者報告があります。
エイズ(英語:AIDS)とは、日本語にすると後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)と言い、以下の意味を伴います。
- 後天性=生まれた後に
- 免疫不全=免疫力の低下によって生ずる
- 症候群=さまざまな症状の集まり
HIVに感染し、厚生労働省によって定められた23の合併症のいずれかを発症した場合にエイズと診断され、英語の「Acquired Immune Deficiency Syndrome」の頭文字をとってエイズといいます。
エイズ感染者数は20歳以上から広く分布しており、特に多いのが30〜40歳代です。また、感染者の過半数が男性による同性間性的接触によるものだと言われています。
HIV感染の原因
HIVは感染者の血液や精液および膣分泌液(愛液・ラブジュース)に多く存在しており、これらを経由した、3つの感染経路に分けて説明します。
性行為によるHIV
特に多い性行為によるHIV感染ですが、性器や肛門、口といった粘膜や傷口を経由して感染します。これらはコンドームの使用により予防することが出来ます。
血液からHIV
血液を輸血する時や、注射器具の共用(覚せい剤使用時に多い)でHIVに感染するケースもあります。
血液からの感染例では薬害エイズ事件がありますが、現在は薬害エイズ事件のような血液凝固因子製剤による感染の心配はありません。
母子感染でのHIV
母体がHIVに感染していると、妊娠中や出産時、授乳時に赤ちゃんへと感染します。
しかしHIV治療薬を使用し、帝王切開および母乳を与えないことにより感染を1%以下に抑えることが出来ます。
HIVの症状
HIVに感染したからといって、すぐにエイズを発症するわけではありません。
感染すると初めにインフルエンザのような症状が出ます。症状が治まると、その後は特になにもなく、自覚症状のないまま数年を経過します。しかしその間にHIVは着々と体を蝕み、人間の免疫力を低下させていきます。
やがて免疫力を大きく失った体は、本来なら防ぐことが出来た病気、日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)を発症するようになり、最終的にエイズと診断されます。
HIV感染を大別すると、以下の3つの期間に分けられます。
急性感染期
初期段階として感染から2〜8週間前後に、風邪やインフルエンザに似た症状が出てきますが、基本的に自然と治ります。
- 発熱
- 発疹
- のどの痛み
- だるさ
- 吐き気
- 下痢
- 筋肉痛
- 関節痛
- リンパの腫れ
これら以外にも、全身に発疹が表れたり、多発性神経炎、脳炎、無菌性髄膜炎といった急性の症状を発症するケースも見られます。
無症候期
上記の急性感染期が過ぎると、数年から10年ほど特に症状は表れません。つまりこの期間に突入すると、誰も自分がHIVに感染していることを疑いません。
しかしHIVは、感染から通常6~8週間経過してから血液中にHIV抗体が検出されるため、この期間のような、症状はないが不安がある場合にHIV検査をすることが最も効果的であると言えます。
また、この期間にヘルペスの一種である帯状疱疹を発症する場合もあります。
この無症候期を逃すと、重い症状を発症するエイズ発症期へと突入します。
エイズ発症期
HIVによって免疫力が低下した体は、感染前であれば自分の力で抑えることができた病気を発症します。このことを日和見感染症といい、以下の病気を発症します。
- カンジダ症
- ヘルペス
- ニューモシスティス肺炎
- サイトメガロウイルス感染症など
上記以外に、抵抗力の低下によって発症する日和見腫瘍(ひよりみしゅよう)という以下のものがあります。
- 悪性リンパ腫
- カポジ肉腫
- 子宮頸がんなど
これらを加えた、厚生労働省が定める23の疾患がエイズ発症の指標として決められており、該当する指標疾患が発症するとエイズ発症と診断されます。
エイズ診断指標
HIV感染を経て、エイズと診断される23の疾患は以下のものとなります。